今、ここに生きる星-転生したら養女モブ!-
第一章 幽霊少女は英雄を救う
第十八話 友達の逆鱗 3
「ピイイィッ!」
そのとき、持ちこたえたのは雪鈴だった。
真っ白な子龍は、動きの鈍った翼を広げ、自身と、主人であるリュウに癒しのブレスを使い、体勢を立て直した。
星滅尽からスターライト・スラッシュの流れるような攻撃を受けたリュウだったが、可愛がってる子龍のブレスで立ち上がり、氷心の槍を持ち直す。
「遅いっ!」
しかし、アスランは、スターライト・スラッシュをもう一度放ち、リュウにトドメをさそうとした。
間一髪、リュウは、槍先でスターライト・スラッシュの軌道をそらし、自分は柔軟な動きでアスランの死角のポジションを取る。
その間にも、子龍雪鈴は立て続けに癒しブレスを使い、リュウのHPを7割方回復した。
槍の達人であるリュウは、氷心を自由自在、攻防一体に扱う事が出来る。だからこそのSSSランクだ。
一瞬、リュウの姿を見失い、動きが止まるアスラン。
そこに、リュウは氷心の固有技を放つ。
「氷の龍よ、我が槍に宿れ! 氷雪ブレス、解き放て!」
まさに瞬く間の隙を突かれて、アスランは氷心の固有技、氷雪ブレスをもろに受けてしまった。
正しくドラゴンのような軌跡を描く氷の波に襲いかかられるアスラン。その身はたちまち凍り付き、麻痺したように動かなくなる。氷の龍が身に巻き付いている間、被るダメージは2~3倍。
そのことは、アスランも知っていて、氷雪ブレスだけは避けたいと思って距離を取っていたのだが……。
当然だが、麻痺している相手だからといって、手を抜いてくれるようなリュウではない。
さらに、氷と槍を同時に操る彼は、固有技ではなくとも、敵を氷漬けにする技には事欠かない。アスランが知っているだけでも、リュウの氷の技は数ある。”氷龍槍””氷龍槍「氷零砕斬」””氷龍槍連斬””氷竜牙連斬”など。近距離、遠距離、範囲攻撃、どれもいけるのが満百歳の彼の親友だ。
氷で麻痺した体ではどうしようもない。アスランが、耐えきれるか--と、身構えた瞬間、リュウの取った行動は、思いも寄らない事だった。
「奔滝・水槍連撃」
簡単に言うと、物凄い勢いの水流を、アスランは連続で氷漬けの体にぶっかけられた。衝撃だけでも凄まじいが、氷の上に冷たい水がかけられて、凍えてしまう。
そこからおもむろに、リュウは、氷心に頼らず、氷の龍を操った。
氷龍槍--凍てつく槍、氷柱の一撃がアスランに襲いかかる。
氷で麻痺させ、水をたっぷりぶっかけて、更に完膚なきまで氷漬けにする気だ。
しかし--速度では、アスランに劣る。
アスランは、凍てつき震える指で、北十字星の鞘を強く握りしめ、魔力を自分の光剣に通した。
魔力は通った。光剣が、自分に応える気配がする。
「星よ、我が剣に力を与えよ! スターライト・バースト!」
目もくらむような煌めく星の輝きが辺り一体を包み込む。同時に、アスランに敵対した相手には、星の輝きが大ダメージを与えていく。そして、アスランの体力は一挙に回復した。
ほぼ全快に近い回復力。これが、北十字星に秘められた能力である。
続いてアスランは、今更ながらに、ミトラ・プロテクション--自分の体に光の盾の守護を得る。そのための呪文を光速で唱えた。これ以上、リュウから大ダメージを貰っている場合ではない。
「星光刃--連星斬!」
体力を回復し、防御を固めたら、後は攻撃あるのみだ。攻撃は最大の防御。
アスランは、光速のスターライトスラッシュの連続攻撃をリュウへと畳みかける。
リュウは確実に後退し、アスランを攻めあぐねてダメージを重ねていく。
一瞬、リュウがよろめいた隙に、アスランはさらに光速で呪文を唱える。
「光り輝く星々よ、我が名を聞け!
天の力を授け、運命を切り開く刃にて、
闇に立ち向かう勇者の証を示せ!
混沌の迷妄を破り、
我が光の剣は星々の導きと共に、
今、舞い上がれ!
不滅の光を纏い、
敵を切り裂く刃となれ!
星の剣舞、発動せよ!」
星の剣舞
北十字星で舞うような動きでリュウへ近付いていき、隙を見せずに彼の青紫の鎧を切り裂いていくアスラン。
一見、美しいだけの動きに見えるが、星の剣舞は攻防一体とされ、迂闊に攻撃すると確実にカウンターが入る。そのため、リュウは簡単には手を出せない。
八つ裂きにする勢いでアスランはリュウに北十字星による華麗で柔軟な攻撃を連続させていく。
重なっていくダメージ。
リュウはあえなくその場に膝を突きそうになる。
それでも彼は彼なりに、自力で自分の傷口に手を当て癒しヒールを行っている。
その瞬間、アスランの目の前が真っ白になった。
「ピイーッ!!」
叫び声をあげながら、雪鈴が彼の顔面に飛びかかってきたのである。
危険も何も考えない、なりふりかまわぬ様子で、雪鈴は空中からアスランの頭と顔に飛びかかり、その小さな四肢で彼の事をかきむしった。
「ピイッ、キュルルッ! ピイイッ!!」
恐らく、主を守るために無我夢中になっているだけなのだろう。
だが、アスランは無情にも、左手で雪鈴シュエリンを自分の頭からもぎはなし、振り回すようにして突きのけた。
雪鈴は力任せに地面に叩きつけられそうになったが、くるりと体を白い翼で反転させ、空中に飛び上がると、アスランの目を狙うようにして、氷のブレスを発射した。
とにかく、主がダメージから立ち直るまでは自分が持たせるつもりなのだろう。
「かわいそうだが……」
子供を斬るようで心が痛む。だが、そんなことを言っている場合ではない。雪鈴がヒールブレスを使う限り、リュウに勝つ事は難しいだろう。
アスランは、北十字星を構え直すと、自分の腕力のみで魔力は通さず、強い攻撃を雪鈴に叩きつけた。さすがに斬る事はしなかった。
まさに一撃で勝負はついた。
鳴き声を放つ事も出来ず、叩かれる衝撃を受けた雪鈴は軽々と数メートルも吹っ飛び、まだ乾いている地面の上に倒れ伏した。
そのまま、目が回っているのか動けなくなってしまう。
英雄と仔竜の差など、こんなものだ。
「アス……ラン……」
そのとき、苦痛の呻きのような声で、リュウがアスランの名を呼んだ。
流石に罪悪感に駆られていたアスランだったが、リュウの方に注意を向ける。
そのとき、リュウの体に変化が起こった。
リュウの頭上に……金髪の額に……黒々とした、角が生え始める。
二本の角。
「……何?」
思わず立ち止まるアスラン。
全身を覆う青紫の鎧。それでもサイズに余裕があったのか……。巨大化していく鎧の隙間に見える肌、そこに青黒い鱗が生え始める。鱗のせいだけではないだろう。体が一回り、二回り……どんどん大きくなっていく。
元々、身長の高いリュウであったが……。
リュウ、彼が、そのとき立ち上がると、余裕で3メートル近い巨躯が、アスランにもわかった。